三七十先生インタビュー | 新たな扉のムコウガワ。Vol.5
インタビュー・コラム 2017.09.08 18:00

第5回のゲストは三七十先生。
電子書籍からコミックス化したばかりの『ラピスラズリの約束』を中心に、貴重なお話をお伺いしました!
―商業BL作家としてデビューするまでの経緯やきっかけを教えてください。
三七十先生:元々趣味で長く漫画やBLは描いていたのですが、プロを目指す覚悟も自信もありませんでした。
そんな中でBL以外のイラストなどのお仕事をぽつぽつといただけるようになり、やっぱりBL漫画のお仕事もしたいと改めて強く思ってBL作家募集をされていた電子レーベルさんにご連絡を差し上げ、有難いことにデビューという流れになりました。
―BL作家になって良かったと感じることは何ですか?
三七十先生:大好きな漫画、その中でも特に好きなBLがお仕事だという毎日そのものがハッピーです。
―反対に、商業BL作家として活動する上で難しいなと感じることはありますか?
三七十先生:常に「売り上げ」という現実がついて回ることです…(笑)
―最近では少しずつその傾向も変わってきていますが、「電子書籍BL=エロ重視」という風潮はやはり根強いですよね。そうした中で『ラピスラズリの約束』のようなストーリー重視の作品を電子で発表するというのはある意味では挑戦だったのではないかと思います。

三七十先生:ラピスは私の中で長く「これが描きたい!」と温め続けていた企画でした。
そして『結魂戦隊ソウルスターズ』(BLfranc)の執筆が終わった後に、担当さんとの打ち合わせで次作をどんな作品にするかという話になった際に話題に挙がったのが『ラピスラズリの約束』の原型となる企画です。担当さんにとっても挑戦だったと思います。
でもどこかで、私にも恐らく担当さんにも「この作品はきっと刺さる人には刺さる」という確信があったのだと思います。そうでなかったらGOサインは出なかったはずですので。
なので、ストーリー重視の作風に挑戦したというよりは、ただただ描きたいものを描かせていただけた、という感じです。

(c)ジーウォーク
―先ほど売り上げのお話しがありましたが、商業作品となると「売れるもの」と「描きたいもの」の乖離に葛藤される作家さんも少なくないというイメージもあったりしますよね。
三七十先生:デビューしたて(まだまだ未熟者ではありますが)の頃はその傾向をすごく意識して描いていたこともありますし、ネタ出しやプロットでボツになることも多くありました。
ですが、とても信頼出来る担当さんとのご縁があってからは「売れる・売れないは担当さんが判断してくれるだろう」と好きなネタを「こんなんどうですか」と持っていっています。
OKをいただけたら、あとは読者さんがどうやったら萌えてくれるかな、ワクワクしてくれるかな、ということを考えて描いています。
創り手が心から楽しんで創ったものに数字がついてくる、というのを信じたいというのもあります。
―ご自身の作品で読者さんに注目してもらいたいポイントはどんなところですか?
三七十先生:今まで描かせていただいたBLは現在連載中のものも含めて8作なのですが、初の長編となった『ラピスラズリの約束』からキャラに対しての向き合い方が大きく変わりました。
「キャラが動く」ということをより鮮明に実感した作品なので、彼らがどう作品の中で生きているかにご注目いただけたら嬉しいです。
とはいえ、読者さんそれぞれの視点で楽しんでいただけるのが一番です!
―続いて、ストーリーやキャラクターのアイデアの源泉について教えてください。

三七十先生:自分の中に溜まっている日々の好きなもの(マンガや映像、音楽などなど)と、自分の感情や周囲の出来事が上手い具合に化学反応を起こしてくれた時に妄想がぶわっと広がることが多いです。
あと、担当さんとの打ち合わせの何気ない雑談の中から「それですよ!!」とお互いが膝を叩くこともたくさんあります。
「あ、何かに使えそう」と思ったことがあったり思い浮かんだらすぐにメモするようにしています。
―物語を考えるにあたってのこだわりは何ですか?
三七十先生:読者さんへの良い意味での裏切りを仕掛けられたらいいなぁ、と思っています。
―そのこだわりの中で、先生が意識していることなどを教えてください。
三七十先生:ラピスの中でワクワク仕掛けていたことは、伏線を張ることやちょっとしたミスリードの他に、電子の単話配信だった為に「え!ここで終わるの!続きどうなんの!」と思っていただけるような『引き』ですね。
あとは、鉱石ラピスラズリに関係する単語を作品の中に登場させたりしています。
また、「読者さんはきっとこんな風に今後を予想するだろうから、ちょっと逸れたルートも通ってみたいなぁ」という思いも随所で反映させました。
―そうした仕掛けのために、自身の作品を客観的に(読者の目線で)見るコツなどはありますか?
三七十先生:私自身も客観的に自分の作品を見るということはとても苦手だったのですが(感情で描くタイプなので)、『どの情報を読者さんに伝えるべきか』『分かっていただくべきポイントはどこか』を押さえられるようになってからはグンと客観的に見られるようになったと思っています。
キャラクターや演出ももちろんとても大事なのですが、『情報整理』という感覚でストーリーの各所をとらえていくと自分の伝えたいこともグッと伝えやすくなるのではないかなぁと。
あとは、映像作品などを観る時に、「あ、今のシーンはこの情報のターンだ」とどういった意味を持ったシーンなのか考えるようにしています。
―先生の作品が出来上がるまでの過程を教えてください。
三七十先生:粗筋→プロット(シナリオ)→ページ割→ネーム兼下書き→ペン入れ→ベタ・トーン処理(同時)という感じで、ペン入れからデジタル、それより前の工程はアナログです。



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―プロットを立てる上で気を付けていることは何ですか?
三七十先生:セリフのリズムやニュアンスでしょうか。同じ意味合いでも自分の中でしっくりこなかったら何度も書き直しています。
あとは、担当さんにお見せするものなので、担当さんにも分かっていただけるようにというのはすごく気を付けています!
自分の頭の中のイメージを出来る限りお伝えする作業でもあるので。
―漫画を描く上での先生なりのこだわりは何ですか?
三七十先生:下記のように、いくつかあります。
- キャラクターの表情
- キャラクターの動きの流れ
- そのキャラらしい仕草になっているか
- テンポ
- 話に合わせて画面の明るさを調整
キャラクターの表情は特に意識して描いています。
一番感情が入り込みやすいネームから表情は描きこんでいて、仕上げの時に更に調整しています。
テンポも個人的にこだわっているものの一つでして、ネームを描いてちょっと前から読んで違和感があったら直しています。
コマ割りだったりフキダシの位置だったりセリフのリズムだったりと、説明しづらいのですが。
―参考にすることの多い資料は何ですか?

三七十先生:よく参照するのは以下のものです。
- ポーズデッサン人形
- 美少年の描き方(グラフィック社)
- BLポーズ集シリーズ(新書館)
- 妄想ポーズ集(新書館)
- 背景カタログ(マール社)
- 自分の手(よくぐるぐる動かしてます)
まず、とってもお世話になっているのがポーズデッサン人形です。手に持ってぐるぐる回したり写真に撮ったりして、『ラピスラズリの約束』や現在連載中の『運命のアステリズム』(ラピスラズリの約束のスピンオフ)で助けてもらってます。
グラフィック社さんの『美少年の描き方』にもすごくお世話になっておりまして、簡潔に1冊の中で各パーツの描き方などをまとめてくださっているので、「あれ…絵ってどうやって描くんだっけ…」と迷走した時などによく練習に付き合ってもらっています。

―作品づくりの際に「BL」というジャンルだからこそ意識していることはありますか?
三七十先生:萌えて!いただきたい!!そして自分も萌えながら描きたい!!
―BLにおける先生のフェチを教えてください!
三七十先生:これは…とても難しいご質問です…。もはやBLは生活の一部なので…(笑)
カップリングでいったら、包容力攻やワンコ攻、ヘタレ攻、ツンデレ受、誘い・襲い受、ビッチ受なんかが好きです(´///`)
あとは何かしら背負っているキャラクターに惹かれがちです!
関係性でいったら一瞬のアイコンタクトで色んなことを交わし合うような関係がとてもテンション上がります!
―今後挑戦したいBLはありますか?
三七十先生:とあるゲイカップルを中心に様々なキャラクターの思惑が交差し、登場人物それぞれの目的がいつ明らかになるか分からないようなヒューマンミステリーBLだったり、その世界のとある職人の物語を描くファンタジーだったり、たくさんあります!
あとは短編も描いてみたいです。詩のような作品にしたいな、と思っていて、エロシーンをどう入れようか思案中です(笑)
―9月末には、展示会も決定されたとお伺いしました。
三七十先生:はい。大変有難いことに、ナイトギャラリー&ダイニングバーreset buttun西荻窪さんで9/22~『ラピスラズリシリーズ展~三七十のボーイズラブ漫画の世界~』を開催させていただけることとなりました。
コラボカクテルのご提供や複製原画、生ネームなどの展示を予定しております。
詳細は電子発BLレーベルBLfranc公式アカウント(@eBook_BLfranc)で順次お知らせ致します。
『ラピスラズリシリーズ展~三七十のボーイズラブ漫画の世界~』
―最後に、読者さんやBL創作者さんへのメッセージをお願いします。
三七十先生:まず、読者さんへ。
三七十の漫画を読んでくださって、楽しみにしてくださってありがとうございます。これからも色々仕掛けさせてくださいね。
そしてこれから読者さんになってくださる方々へ。
「この人の漫画気になるな」と興味を持っていただけたら是非お好きな作品を手にとってみてください。
BL創作者さんへ。
NO BL NO LIFE, BL is LOVE!! 皆さんの萌えの塊を作品にぶつけ続けてください!わたしもぶつけ続けます!
―三七十先生、インタビューありがとうございました!

三七十
BL漫画家
ebookjapanにて連載の電子BLコミック『ラピスラズリの約束』が書籍化、ジーウォークよりコミックスが発売。
現在、『ラピスラズリの約束』のスピンオフ作品『運命のアステリズム』(ebookjapan)連載中。
9/22よりreset button(西荻窪)でコラボイベント『ラピスラズリシリーズ展~ 三七十のBL漫画の世界~』開催。
詳細はBLfranc公式アカウント(@eBook_ BLfranc)にて順次発表。
▽刊行リスト
『ラピスラズリの約束 上』(ジーウォーク)
現在、『ラピスラズリの約束』のスピンオフ作品『運命のアステリズム』(ebookjapan)連載中。
9/22よりreset button(西荻窪)でコラボイベント『ラピスラズリシリーズ展~
詳細はBLfranc公式アカウント(@eBook_
▽刊行リスト
『ラピスラズリの約束 上』(ジーウォーク)