文善やよひ先生インタビュー | BL作家のウラガワ。Vol.1
インタビュー・コラム 2017.05.24 18:00

作家の皆さんの普段は見えない裏の部分に迫るインタビュー企画『BL作家のウラガワ。』をお届けします!
初回更新となる今回は、3名の先生方にご協力して頂きました。
ゲスト1人目は、2015年発売のコミックス鴆-ジェン- (Canna Comics)(プランタン出版)がBL読者の間で大きな反響を呼んだ文善やよひ先生。
そんな文善先生のどこか浮世離れしたおとぎ話のようなストーリーと繊細で美麗なイラストは一体どうやって完成していくのでしょうか?
シナリオづくりからイラスト制作まで、気になるウラガワのお話をお伺いしてきました。
文善やよひ先生インタビュー
―文善先生の作品の大きな魅力として、現実世界と幻想的なファンタジーの世界とが絶妙に交じり合った世界観が挙げられると思います。
ストーリーやキャラクターの設定などは、どのようなときにどうやって思いつかれるのでしょうか?
文善先生:ありがとうございます。特にファンタジーに拘りがある訳ではないのですが、寓話調のお話が好きなので、結果ファンタジーっぽいものが多くなっています。
あと、図鑑や本で生き物の事などを調べるのが好きなので、趣味で図鑑などを読んでるときに創作のネタになりそうな動植物を見つけてネタにすることも多いです。
―作品づくりにあたっては、動植物関係の図鑑などからインスピレーションを受けられることが多いのですね。
文善先生:はい。あとは昔読んだ絵本とかの内容を思い出してみたり…。
最初ふわっと話の流れだけ思い浮かべて、そこに細かい設定やキャラクターを肉付けしていくかんじです。
―そのように物語を一から構成していく上で、何かこだわっていることなどはありますか?
文善先生:こだわり…は、逆に変にこだわり過ぎないようにと思ってます。
上記の通り、最初に話や設定が浮かぶことが多いのですが、実際キャラクターを立てて動かすと最初思ってたシナリオと違う方向に向かってしまう事もしばしばで…。
その結果、最初考えてたシナリオとずれて張ってた伏線とかが何の役にも立たなくなったりするのですが、話の整合性よりはキャラの動いた方に、自分が思いついた方向にと自由に話を進めていけるとよいなと思っています。プロットとネームで全く別物が出来ることもしばしばです。
―実際にキャラクターに自由に動いてもらって…という形の上ではそのキャラの細かい設定なども重要になってくるかと思いますが、そのあたりの肉付けも初めからがっちりと練るのではなく流動的だったりするのでしょうか。
文善先生:とっても流動的です!そこそこに最初に設定固めてるつもりなのですが、いざ連載が終わってみるとプロットもキャラクターもシナリオもオチもけっこう変わってます。(『鴆』のツァイホンの羽根は1話め描き終わるまで白くなる予定じゃなかったし、『極夜』の天野は後編ネーム描くまで常世へ行く設定じゃなかったのです…)
―文善先生のカラーイラストはいずれも非常に美しく印象的ですが、制作の大まかな手順を教えていただけますか?
文善先生:カラーへのコンプレックス凄まじかったので、そう仰って頂けて嬉しいです!
仕事のカラーですと、最初にラフを何案か描いて提出します。

文善先生:先方さんとお話して、案が決まったらそのまま下書き~ペン入れまではアナログで描いてスキャンします。
サイズはその時の気分によりけりですが、B4~B3くらいの、けっこう大きめの紙に描きます。ペン先は日光のGペン愛用です。

文善先生:ラフ通り人物だけだと寂しい気がしたので、小物を手前に追加してます。

文善先生:スキャン後の線画の調整~最後の仕上げまでは全てフォトショップで行います。
人物のレイヤー分けをざっくりした後で色を塗り始めるのですが、ブラシにはあまり拘りがないのでデフォルトで入ってるエアブラシか、広範囲の部分はグラデーションツールで好きなグラデを作って塗りつぶします。

文善先生:あまり濃淡を強くつける作風ではないので、陰影はなんとなくつけるくらいで、線画の塗り分けで色数出してます。
塗り終わったら、線画以外のレイヤーをいちど結合して複製し「輪郭検出」フィルターで水彩境界っぽいものを作り乗算します。これするだけで何となく凝った色塗りしてる感が出ます。


―貴重な工程をありがとうございます!
作品では小物や背景などもとても緻密に描かれていますが、やはり先ほどお話しにあったように図鑑などの書物を参考にされているのですか?
文善先生:植物などは自分が好きというのもあるのですが、話の鍵になるような大事な花や表紙に描くようなものは、なるべく現物をいちど見てから描くようにしています。図鑑で見て思っていたものと、実際の花の大きさがかなり違う…なんてこともとてもよくあるので。
…そうやってかこつけて、〆切前に山へ散策に出たり植物園に行ったりしてリフレッシュすることもあります。
―先生の緻密な作画は、そうした心掛けから生まれているのですね。
文善先生:現物を見ると思ってたものと違う…というのはよくあることです。
小物や衣装は、写真資料などをなるべく見て描くようにはしているのですが、元の構造がそもそも分かってなかったりで後から見るといい加減な箇所など沢山あって反省してます。
―〆切り前にリフレッシュも兼ねてということですが、そうして煮詰まっているときこそ実際に外に出てみるとまた新たな発見が…なんてこともありそうですね。
文善先生:本当にまずい時はさすがに籠もるのですが…いやどうだろう。けっこうやってるかもしれないです。
―続いて、BL作家としてデビューするに至った経緯を教えていただけますか。
文善先生:数年くらい絵も何も描かない時期があったのですが、久々に沸いたジャンルで同人誌(二次創作)を描き出したら、偶然お目に留めて下さった編集さんに声をかけていただきデビューいたしました。きっとすっごく運が良かったのだと思います。
―では、初めから創作BLでのデビューを目指していたというよりは、巡り合わせによって…という流れだったのですね。
文善先生:お恥ずかしい話なのですが、元々漫画とかもあまり詳しくなく、声をかけていただいて初めて商業BLというジャンルがある事を知りました…。どんなものなのだろうと読んでみたら、今ではすっかり嵌って一読者です。
―そうだったのですか!となるとなおさら本当に偶然というか、不思議な縁でのデビューだったのですね。
文善先生:そうですね。仕事で描かせていただくにあたって「ファンタジーっぽいものが絵に合うんじゃないか?」と提示いただいたのもデビュー時に声を掛けて下さった担当さんです。
―まさしくその担当さんとのご縁があったからこそ、今の文善先生と先生の作品があるのですね。
この度は貴重なご意見の数々をありがとうございました。
文善先生:こちらこそ、貴重な機会を頂きありがとうございました!
―最後に、BL創作を行っている方や読者の方へのメッセージをお願いします。
文善先生:BLは描くのは楽しく、そして読めば日々の疲れを癒やしてくれるデザートみたいなものだと思うので、この輪がもっと広がれば良いなと思っています。
身になるような事は何一つお伝えできませんでしたが、ここまでお読み頂きありがとうございます!
―文善先生、インタビューありがとうございました!
文善やよひ
BL漫画家
緻密かつ繊細なタッチで描かれる幻想的な作風で、ファンタジーファンだけでなく幅広い層のBL読者から支持を得ている。
現在、オリジナルBLアンソロジー「Canna」(プランタン出版)にて『鴆 比翼の鳥』を連載中。
▽刊行リスト
『はやにえの恋』(プランタン出版)
『満月の王』(〃) ※新装版『極夜』が発行
『鴆-ジェン-』(〃)
『極夜』(〃)
現在、オリジナルBLアンソロジー「Canna」(プランタン出版)にて『鴆 比翼の鳥』を連載中。
▽刊行リスト
『はやにえの恋』(プランタン出版)
『満月の王』(〃) ※新装版『極夜』が発行
『鴆-ジェン-』(〃)
『極夜』(〃)